ジュン×金糸雀

 辿り着いた先は洗面所。
 ジュンは水を出し、金糸雀の体から汗と蝋を流してやる。
 体にこびり付いた蝋を全て剥がし終わったところで、漸く眼を覚ます。
「お、終わったの……?」
 おどおどとした声で、ジュンに尋ねた。
 ジュンは無言で彼女を洗い続けていたが、その言葉に洗う手を止める。
 濡れた体を抱き上げて、自分の服が濡れるのも気にせず抱き締めた。
「へ……?」
 急に優しく扱われ、戸惑う。
 が、その間にも洗面所のボウルには水が溜まっていった。
 一杯になったところで、行き成り金糸雀を頭から水に浸ける。
 ガボガボと空気を吐いて苦しんでも、ジュンは容易には赦さない。
 溺れる寸前でようやく顔を水から出してやり、しかし、また直ぐに浸け込むのだ。
 数度それを繰り返すと、金糸雀はぐったりして動かなくなった。
 疲労は既に極致か、叫ぶ事もすすり泣く事も無い。
「部屋に、行こうか」
「もう……堪忍、して」
 残り少ない力で許しを乞う。
 されどジュンは金糸雀の訴えを聞く事もなく、
 疲労困憊の体をタオルで包み、
 再び、自室へと――。


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