ジュン×水銀燈

「……って、そんな訳にもいかないよなあ」
 僕は取り敢えず風呂場の床にバスタオルを敷き、そこにサルベージした水銀燈を寝かせた。
 どうやら、息をしていないみたいだ。
 いや、元々息しないんだったか……真紅のネジが切れた時はどうだったろう?
「まあ……良いや」
 一応、気道確保くらいはしておこう。
 首に巻かれたリボンを解き、襟(?)を外す。
「服、大分水を吸ってるなあ」
 ゾロっとした衣装は水を吸い込み、少し重さを増している。
 胸の上にべったり張り付いて乗っかってたら、苦しい……よな?
「えっと、ボタンか何かは無いのか」
 僕は水銀燈のドレスの胸元を緩め……ると言う訳にも行きそうにない仕立てなので、
「……ふん、別にやましい気持ちがあった訳じゃ無いぞ」
 結局、全裸に剥いてしまった。
 球体関節の肉体が余す処無く、僕の目に曝される。
 節別れした手、節分かれした足、節分かれした胴体……
 婀娜なうなじ、膨らみかけの胸、綺麗な筋が一本の……

「こいつらを作った奴って……」

 きっと稀代の天才か、凄まじい変態のどちらかだ。

 だが、それはさて置き、僕の前に居る少女は余りに美しく、可愛い。


「じ、人工呼吸くらい……しておいた方が、良いよな?」

 だって、息してないんだぞ。


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