ジュン×水銀燈

 今、風呂に入ろうとしている僕は、引き篭もる、ごく一般的な男の子。
 強いて違うところを挙げるとすれば、薔薇乙女のミーディアムってことかな……。
 名前は桜田ジュン。
 姉ちゃんに呼ばれて、一番風呂に入りに来たのだ。
 だが風呂のフタを開けると、湯船で黒い塊が暴れていた。

「……って、うわぁっ! 水銀燈!?」

 驚く僕の前で、奴はジタバタと翼をバタつかせていたのだ……!

「……ねえ」
 真紅達を呼ぶべきだろうか。
「ちょっとぉ……」
 それとも、ここは逃げるべきだろうか。
「ねえってばぁ!」
 これは鴉の行水ってやつで良いのだろうか。

 ……僕は目の前の脅威に、冷静な判断を下せない。

「……人間、見てないで助けなさいよぉ……」

 助けろって、何をさ。

「Nのフィールド開く場所間違えちゃったのよぉ……本当は、物置の鏡から出る筈だったのぉ」

「それで僕の一番風呂を先に奪ったのか」
「そんな事よりぃ、溺れそうなのよぉ……助けゴボッ、ガボゲボ……」

 水銀燈は沈んでいった……。
 また、アリスゲームの脱落者が一人。


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