ジュン×蒼星石 その1

『蒼の目覚め』 2

「蒼星石……こっちに来てくれないか……」
ジュンの言うとおりに蒼星石はテクテクと歩いていく。ベッドの下まで来ると、ジュンは静かに蒼星石を持ち上げて
自分の膝の上に置いた。
「ジュン……?」
少し驚いて蒼星石はジュンを見上げる。
「ん……」
右頬を静かに撫でられて蒼星石は小さく声を出した。
「あたたかい……本当に生きているんだな……ローゼンメイデンは……」
「そうだよジュン。でも、そのことはジュンが誰よりよく知っているんじゃないの?」
「生きているとかそういうことじゃないんだ。僕は、蒼星石の肌のあたたかさに驚いているんだ。本当にあたたかい」
蒼星石はキョトンとした表情を浮かべたが、目を閉じてジュンの手の上に自分の小さな手を重ねる。
「うん、ジュンの手もあたたかいよ。考えてみたら、ボクはこういう触れ合いをあまりしてこなかったように思える」
「そうなのか……」
ジュンは指の腹で蒼星石の頬や顎、うなじを優しく撫でていく。
「ん……ジュン……?」
必要以上の接触に、蒼星石は少し戸惑いながらジュンを見る。膝の上に抱えられているため、ジュンの顔が近い。その
顔は少し赤みを帯びて蒼星石をじっと見つめている。その視線に若干の恐怖と、そしてまた若干の何かを胸の奥に感じ
ながらジュンのなすがままにされる。
「ダメだよ……くすぐったいってば……」
少しふざけた声で言うつもりだった。しかし、その意思とは反して、自分でも驚くぐらい切ない声だった。
「あれ、おかしいな……ボク……」
自分の身体の奥の変化に戸惑い伏目になる。その潤んだ瞳のまま、チラっとジュンを見上げる。
(か、可愛い……)
蒼星石の肌があまりに人間のそれと同じことに夢中になって撫で続けていたジュンは、その切なげな蒼星石の瞳を見て
素直にそう感じた。外見がボーイッシュなだけ、その仕草は蒼星石が女性であることをいやが上にも強調させた。
「蒼星石……」
さっきまでより優しく蒼星石の頬を撫でながら、ゆっくりと蒼星石を抱き寄せて耳元に口を近づける。
「ジュ、ジュン……?」
「僕は君たちの全てを知りたい……。今は蒼星石、お前のことをもっと……」
「え……?」
ジュンの熱い息がかかるのを感じながら蒼星石はその言葉の意味を考えた。
「ジュン、それって……」
ジュンの指がそっと蒼星石の胸元のリボンをつまむ。蒼星石は一瞬悩むような表情になったが、顔を伏せて小さく呟いた。
「…………………………いいよ」


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