ジュン×蒼星石 その1

『蒼の目覚め』 1

ローゼンメイデン……ローザミスティカにて魂を宿す不完全なる人形たち。
ジュンは彼女たちの、まるで本物のような身体に興味を持っていた。以前触れた真紅の肌は人間のようだった。
どこまで人間のそれと同じかを純粋に興味から確かめたかったが、実行できるほどの勇気を持ち合わせていなかった。
真紅や翠星石相手ではあとが怖そうであるし、子供子供した雛苺で試すのは若干抵抗がある。
(確かめたい……ああ、でもなー)
真夜中ドールズが眠りについた後、鞄を見ながら一人悶々と悩んでいると、そのうちの一つが開いた。
「ん……?」
中から出てきたのは蒼星石だ。翠星石とは対照的にボーイッシュな外見をした薔薇乙女。他のドールズと比べると
常識を持ち合わせているが、真面目すぎてどこか近寄りがたいという感想をジュンは抱いている。
「ジュン、どうしたの?」
「何のことだよ?」
「このところどこか思い詰めたような表情をしている」
ジュンは驚いた。蒼星石は自分のことなど興味を持っていないだろうと思っていたからだ。
「そんなことない」
「いや、前のボクと似たような顔をしているんだ。翠星石や真紅たちを敵に回していたときのボクと……」
(そんな大層なことじゃないんだけどなー……)
「君には感謝しているんだ、ジュン。翠星石があんなに楽しそうにしているのは久しぶりに見るし、ボクだって
皆と一緒に暮らせて嬉しい。だから、何かボクにできることがあったら……」
(…………)
そのとき、ジュンは自分の悩みを解決してくれそうな存在が目の前にいることに気づいた。近寄りがたさから選択肢に
入れることを無意識にしていなかったが、蒼星石は翠星石のように騒ぐ性格ではないし、あまり女性を感じさせない外
見は、自分がやろうとしていることの抵抗感を和らげそうだ。


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