水銀燈×真紅・ジュン
次の日の昼下がり。
いつものとおり、机に向かってカチカチとパソコンのマウスを鳴らせている僕の背後では、胸焼けするほど甘ったるい雰囲気がかもし出されていた。
「ねぇ〜ねぇ〜真紅ぅ♪……本なんて読んでないでぇ、水銀燈と遊びましょうよぉ〜、ね〜ぇ〜♪」
甘い猫なで声を出しながら、水銀燈は、床に座って本を読んでいる真紅にかまって欲しそうに甘えていた。
自分の顔を真紅のほっぺにスリスリと擦り付け、まるで雛苺のように抱きついて甘えるその仕草からは、昨日までの高慢な態度のみじんも感じられない。
「ちょっと……そんなにベタベタとくっ付かないでちょうだい、暑苦しい……ウザイのよ」
「!?……あぁぁ♪……ねぇねぇ聞いたぁ、ジュン?……水銀燈、ウザイって言われちゃったぁ……♪」
今日は朝からずっとこの調子で、彼女はいままでたまっていたものを全て吐き出すように甘えていた。
おまけに真紅に邪魔だのウザいだのと言われるたび、マゾの彼女にとってはそれが快感なのか、嬉しそうに体をよじりはじめる始末。
「な、なんでそんなに嬉しそうなんだよお前は……ていうか、キャラ変わりすぎだぞ!」
「ジュ、ジュンの言うとおりですぅ!……だいたいなんであんたは、この部屋に当たり前のようにいるのですかぁぁ!」
僕の言葉に続き、水銀燈のあまりの変貌ぶりに驚いている翠星石が、彼女に向かってお得意の口調で話しかける。
「あん、だって一人じゃ寂しいんだものぉ……あなたでもいいのよぉ、翠星石ぃ……その汚い言葉づかいで……水銀燈をなじってぇ、罵ってぇ……♪」
[前へ] [次へ] [戻る]