水銀燈×真紅・ジュン

あぁん……こんなこと言うつもりじゃなかったのにぃ……。
ほんとはその可愛い顔にほお擦りしたいくらいなのにぃ……。
どうして、いつも真紅の前にくるとこんなこと言っちゃうのよぉ……水銀燈のバカバカぁ!

心の中で自分の頭をポカポカと殴る仕草を思い浮かべながら、私は素直になれないもどかしさにやきもきしていた。
一方、私がそんな乙女チックなことを考えているとは思いもしないだろう真紅は、早く話を進めたそうに次の言葉を放ってくる。

「で、いったい何の用なのかしら……もうすぐ私は眠りにつく時間なのだけど?」
「ンフフ、わかっているんでしょぉ?……あなたのローザミスティカ、今日こそこの水銀燈がいただくわぁ♪」
「……まったく、よく飽きないわね……毎日毎日、しかも決まってこの時間に……」

いかにもめんどくさいといったふうな顔をして、ハァっとため息をつく真紅。
彼女の言うとおりここ最近の私は、彼女達が眠るこの時間、この家に来るのが日課になっていた。
この時間に来れば他の子たちは眠っている可能性が高いため、真紅と二人きりになれるかもしれないからだ。
その期待通り、床にある4つのカバンのうちすでに3つの蓋がきれいに閉じられている。

あん……でもほんとは違う、違うのよぉ真紅ぅ……。
ほんとはローザミスティカなんてどうでもいいの……。
私はあなたに会いたくて、ここに来てるのよぉ……。

その証拠に『ローザミスティカを奪うため』などと言いつつも、毎晩ここで行われるアリスゲームでは、私はまるでやる気を出していない。
もしこの翼の一片でも真紅の体に突き刺さり、その美しい体に傷でもつけてしまったらと考えると、とても本気などだせるわけがなかった。
せいぜい、この部屋にあるよくわからないおもちゃを壊す程度のことしかしていない。


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