ジュン×翠星石

 一方、翠星石は。
(──ふっふっふっ、チビ人間め焦ってるですぅ)
 ・・・苦悩するジュンを密かに眺めながら、満足げにほくそえんでいた。
(わたしの魅力に惑わされても、体がキューピ○人形ではなにも出来ない
です。そうやって悶え苦しみやがれですぅ)
 作戦を思いついたのは、昼間テレビで眼前にぶら下がったニンジンを必死
で追う馬を見た時だった。ここまで上手くいくとは思わなかったが、今の
ジュンは完全にお預け状態。苦悩するジュンの姿に翠星石は笑いを堪える
のが大変だった。
(でもこれは序の口ですぅ。もっとも〜っといたぶってやるですぅ)
 ジュンに見えない角度で、翠星石はキラリと目を光らせた。


「チビ人間・・・わたしは魅力ないですか?」
 翠星石が発した声に、ジュンははっとして顔を上げた。
 ジュンの視線と、翠星石の視線が交わる。寂しげなその瞳に、ジュンは
自分の胸がどきりと高鳴ったのを確かに感じた。
(そ・・・そんな顔すんなよ・・・)
 いつもは憎たらしい翠星石の顔から、今は目を離すことが出来ない。頬が赤く、
そして熱くなっているのがわかる。
(俺・・・俺・・・)
 そうしてジュンが悩む間も、翠星石は切なそうにこちらを見ている。
(と、とりあえず、放っておいちゃだめだよな・・・)
 意を決し、ゆっくりと彼女に近づく。急に近づかれて驚いたのか、慌てる翠星石
を優しく抱き起こし、
「翠星石・・・・・・」
 そっとその唇に口付けた。


[前へ] [次へ] [戻る]