真紅×水銀燈

7.
何故か思わず耳をふさいで逃げ出そうとする水銀燈を背後からがっちりとフルネルソンに
極めてささやき続ける真紅。
「でも・・・私を思いやり、慕う心は、その欲望より大きいの・・・だから、彼は、
その指で・・・毎晩、自分を慰めて・・・でも、私が笑顔を向けると、その自制心も、時折揺らいで・・・」
「きゃーっ!きゃーっ!!!」
 これも、例に漏れず、実際には、テレビを見るときには、必ずジュンに抱っこして
もらって、さりげなく、自分の胸や腰にジュンの手を導いていたりする。
 そして、気付いて、あわててずらそうとするジュンを、時折、不思議そうに見上げてみたり、
ちょうど良い位置にあるジュンのズボンの股間に、さりげなく自分のお尻を押しつけ、こすり、
柔らかく体重をかけたりするのであった。
 そのうえ、要所要所で、ジュンの手や腕に、頬をそっとすり寄せて、甘やかにため息を
漏らしてみたりする。
 少女の外見でも、実際は長い長い年月を体験した(歴戦の戦士)の技であった。
 さらに、深夜にそうっと起き出しては、毎夜毎夜、熟睡中のジュンの耳元で、
公共の放送では消して流せないような過激な単語が満載の、悩ましい物語を
(当然、配役は真紅とジュンである)ささやき続けているのである。
 思春期にさしかかり始めて、人生で一番性欲の強い時期の少年には、少し酷すぎる
責めに、ジュンは、認めたくない(暴発)の後は、自己嫌悪に陥りながらの「事故処理」
を行っているということなのだが・・・
 そこで、ふいに、ぱっと手を離す真紅。勢い余って盛大に地面に顔面をたたき付ける水銀燈。
「いっ・・・いったぁい・・・」
 ようやく身体を起こし、半泣きで鼻を押さえる水銀燈を見下ろして、穏やかに勝ち誇る真紅。
「そう。幸せな、今、とても幸せな私は・・・
 もう、アリスだけを追い続けなくても、いいような気がするのだわ。」


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