真紅×水銀燈
「・・・お父様に・・・完璧な乙女、アリスだと、認めていただく・・・
そう、姉妹達を全て破って、ただ一人の、至高の乙女とみとめていただく。
それに匹敵し、あるいは、それを凌駕する、唯一のもの。
それが、おやつの時間なのだわ。」
自分の説に絶対の自信を込めて、胸を張る真紅。
「・・・・」
「そう。
ジュンも・・・この頃は、ようやく、私の下僕としての自覚が出てきたのだわ。」
「・・・・」
「おやつの時間になると、私を、呼んでくれるの。・・・まあ、口調はまだまだ野卑だし、
声量を抑えるのも苦手なようだけど・・・
その声の中には、主人である私への、無限の敬意と、永遠の愛情が、どうしても
隠せていないのだわ。」
「・・・・」
止めることも忘れて唖然としている水銀燈に、つい、と真紅は形の良い鼻をそらす。
「そう、そうして、私を、その手で・・・恭しく抱き上げて、席へ運んでくれるのだわ。
ああ、でも、いくら私への愛情が抑えられないからって、抱き上げたときに、なかなか
離してくれなかったり、頬や髪をやたらと愛撫しようとするのは、まだ子供なのだけれど。」
実際は、ジュンが抱き上げるまで、じとっとした視線で要求しつづけ、抱き上げたら
抱き上げたで、淑女としてはしたなくない範囲で、しっかりとしがみついてなかなか離さないのも
真紅の方なのだが。
(おい、席についたぞ。真紅。)
(・・・座らせて、髪を整えて頂戴。)
(・・・なんで、毎回・・・)
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