真紅・翠星石・雛苺×ジュン

「ジュン、今日は様子が変よ」
 真紅がジュンに近づいてきた。と、ジュンの顔を覗き込んで表情を変える。
「これは……!」
「どうしたですか? 真紅」
「ジュン、病気なの?」
 翠星石と雛苺はわけがわからないようだ。それはジュンも同様だった。
「何なんだよ、いったい……」
「ジュン、ちょっとだけ失礼するわね」
 そう言って、真紅が突然ジュンの唇に口付けた。
「んむっ!?」
「ん……ちゅっ……れる……」
 真紅はジュンの口腔に舌を入れ、唾液を送り込んでくる。
「んな!? な、何をやってやがりますか! 真紅!」
「うわー、すごいの、ちゅーなの」
 翠星石と雛苺が騒ぐ。
 だが、一番混乱しているのは当のジュンだ。
(え? これってキス!? なんで突然!?)
 抵抗しようにも、体が重く、言うことをきかない。それに真紅の接吻は温かく、かすかに甘く、心地よかったのも事実だ。
「ん……ぷはっ」
 ようやく真紅が顔を離した。妙に長く感じたが、時間にしてみれば一分もたっていない。
「な、何するんだ、真紅!」
「怒鳴ることができるくらいには回復したようね」
 ジュンの抗議にも、真紅は涼しい顔だ。いや、かすかだが顔が赤い。
「それで真紅、なぜジュ……ちび人間にこんなことをしたですか?」
 翠星石が真紅に詰め寄った。
「……わかったわ、翠星石。ジュンも雛苺も聞いて頂戴」
 こうして、真紅の説明が始まった。
「今、ジュンは一人で私たち三体に同時に力を分け与えてるわ。その分、媒介は体力を消耗しやすくなる。つまり、ジュンの体力に限界がきたのね」
「それが……なんでキスになるんだよ」
「口を通して、私の力をジュンに送りこんだのよ。……感謝しなさい。この真紅の……その……初接吻を捧げたのだから」
 さっきの接吻を思い出したのか、真紅の頬が朱に染まっていた。
「それをいうなら僕だってファーストキス……いや、この場合ノーカンだよな、相手は人形だし……でも舌まで入れられたし」


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