真紅・翠星石・雛苺×ジュン

 その日、桜田ジュンは午後1時を過ぎてようやく目を覚ました。
 枕もとの目覚まし時計を見て、絶句する。
「……うわ、なんでもう昼を過ぎてるんだ?」
 とりあえず着替えて、階下のリビングへ向かう。
 今日は妙に体が重い。壁に手をつきながらでないと、まともに歩けない。
「……風邪でも引いたかな」
 リビングでは真紅たちが『探偵犬くんくん』を録画したビデオを見ていた。
『くんくん』の放送されない日は、こうしていつもビデオを見ている。
(よく飽きないな、こいつら)
 そんなことを考えていると、真紅がジュンに気づき、振り向いた。
「あらジュン、ずいぶん遅い目覚めね。のりはすでに学校へ行ったわ」
「ちび人間、たるんでるです。根性が無いから寝坊なんかするです」
 翠星石もいつものように毒舌を浴びせてくる。
 いつもなら何か言い返してやるのだが、今日はその気力が沸いてこない。
「どうしたの? ジュン」
「ちび人間、張り合いがねーです」
 ジュンの異常に気づいたのか、真紅と翠星石が首をかしげる。
「うるさいな……何でもない」
 なんとかそれだけ答えて、昼食を取るためにテーブルへ向かう。
「ジューーーーーーン!!」
 その時、ピンク色の物体がジュンの背中にぶつかってきた。雛苺だ。
「うわっ……」
 ジュンはたまらずバランスを崩し、倒れる。
「うや? ジュン?」
「ちび人間、ひ弱すぎですぅ」
「うう……」
 ジュンは雛苺に背中に乗られたまま、床から起き上がることができない。体に全く力が入らないのだ。


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