ジュン×翠星石

慣れない言葉に恥ずかしがっているのか、少し顔を赤らめながらそう言った。
「別に気ぃ使わなくてもいいって…」
「!?べ、別にお前なんかに気なんかつかってないですぅ!!み、み、身の程
し、知りやがれですうっ!!」
優しく話し掛けられると毒舌を吐くのはどうやら反射条件のようだ。
(この野郎…人が気を使えばこれか…)
「で?性悪な毒舌呪い人形は僕に何を給いに来られ……むぐ…ん??!!」
飛び切りの皮肉で返してやろうとしたジュンは、突然のやわらかな感触に口を閉ざされた。
翠星石がおもむろにジュンにキスをしてきたのだ。しかも口に直接である。
今まで女の子からキスなんて貰った事の無いジュンは、初めてのその感覚に体を硬直させた。
「…全く何をぼけぇ〜っとしてるですかっ!少しは感謝しやがれですよ……」
キスが終ってもまだ呆然としているジュンにそう言うと、翠星石は自分の鞄に向かって歩き出した。
「な…なんで…?」
ようやく喋れるようになったジュンは言った。
「ご…誤解するなです!!なな何もお前の事がす、す好きでやったわけじゃない…ですよっ!!」
振り向いた翠星石は妙に慌てて言った。
「はぁ?…誰もそんな事聞いてないけど…?」
「う…うう…」
俯いた翠星石の顔が急にかぁっと赤くなった。知られたくないと思っていることが
思わず口に出てしまったりするのは人間も人形も同じのようである。


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