ジュン×真紅・翠星石・雛苺

 映ったときからずっと変わってはいない。少女(?)はときおり恥ずかしがったりするものの、愉しそうな笑顔を振り撒いている。
 だがその顔はニコニコしながらも、いつの間にか人を(人形を)小馬鹿にしたような印象に変わっていた。
 それは冷静に注意深く見ていれば、特にドールズには、不本意ではあるものの見馴れたその表情は、それこそすぐにわかっただろう。
 しかしいまこの場には、ドールズも含めて冷静なものは誰もいない。
 そのすっかり冷静さを欠いているドールの一体、翠星石は『早く言いやがれですぅ!!』そんな感じで身を乗り出し、少女(?)の
次のセリフを待った。
「やだぁ、そんなに見られたら言えないよ………………恥ずかしいよ」
 言われてハッとなった翠星石はさっきから真っ赤になっている顔のその上から、またしても羞恥心の色を上塗りする。
「……くすっ」
 手を合わせ指を絡めると、目を細め首を傾げながら、少女(?)は本当に愉しそうに、翠星石を見ながら鈴の音が鳴る様な声で笑った。
 あきらかに、よく知る誰かの仕草なのだが、頭に“カッカッ”と血が上っている(あればだが)翠星石は気づかない。
 両手をワキワキさせながら、いまにも画面に向かって飛び掛りそうだ。
 もっともそれを見下ろす少女(?)は、ちっとも怖がっている様子はない。笑みを深くする一方だ。
 ただ飽きっぽい性格なのか、
「怖い怖い、そんな顔されたらジャンクに……………じゃなくて、教えてあげないわよン♪」
 少し調子に乗ってきたのか、少女(?)は思わずお得意の決めセリフを言ってしまったが、それには構わず人差し指を立てると、
空中を撫でるように“スィッ……”と下ろす。
「ほら、私の真似をしてみて」
 なにか色々『納得いかねぇですぅ』と引っかかりを覚えはするが、このままでは話しが進まないので、翠星石は大人しく人差し指を
立てると、少女(?)よりも多少乱暴に空中を“スィッ……”と撫でた。


[前へ] [次へ] [戻る]