ジュン×真紅・翠星石・雛苺

「ふぅ……」
 切なそうに(ジュンにはそう思えた)ため息を吐くと、頬をうっすらと赤く染め上げた顔を、すすっとジュンへと寄せてくる。
「お、おい待って!?……オマエなにしようと……」
「黙って」
 その声は短く静かだが、決して無視出来ない強い力が込められていた。いまのジュンはヘビに睨まれたカエルの心境である。
 ただ真紅の顔が近寄ってくると、鼻孔には“ふわり”と女の子特有の甘い匂いが流れ込んできて、恐怖心を綺麗に消し去ってしまった。
 口唇が微かに開いて、紅い舌がチロリと覗くと、心臓がドキドキと高鳴る。それは誰が考えても、
 違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う……違う!! 相手は人形だぞ!! 期待でドキドキなんてするわけ……
 素直になれないひねくれた思春期のガキの、隠しようのない期待と興奮の表れだった。
“ぺろ……”
「んンッ!?」
 雛苺に本気噛みされて、ほんの少しだが赤くなっている耳に、真紅の舌が優しく触れる。
 口からはまたしても恥ずかしい声が洩れてしまったが、ジュンはそれを取り繕うどころではなかった。
 複雑なつくりの耳朶をねぶるように、真紅は翠星石よりも更に巧みに甘噛みしながら、小さな舌を挿し込んでくる。
 くすぐったい。ムズがゆい。でも……もっともっとして欲しい。
 真紅の舌が“ヌロ〜〜”と唾液の糸を引きながら頬を這って降りてくると、ジュンは自分から顔を傾けて首を舐めやすいようにする。
「んぅ…………んぁッ……んふ………はぁッ………ン……んンッ!?」
 ジュンの望み通りに舌を這わせると、真紅は“チュッ”と小鳥が啄ばむような音をさせながら、いくつもいくつもキスマークをつけた。
 それにエラく対抗心を燃やされたのか、反対側のドールが“メラメラ”と瞳に効果音をつけながらジュンを睨んでいる。
 ただこれで案外引っ込み思案の翠星石は、“行こうか行くまいか?”などと迷っているうちに先を越された。


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