ジュン×真紅・翠星石・雛苺

「チビ苺!! オマエなにしてんだ!! ボクがいったいなにしたんだ!!」
 右耳を大袈裟に押さえながら、ジュンは“ほえっ?”と不思議そうな顔をしている雛苺を睨みつける。
 とうの犯人、雛苺は少女(?)以上に幼い仕草で首を傾げると、小さな指先で画面を指した。
「巴が言ったなのよぅ 耳を噛むとすご――――――く気持ちいいって 雛はジュンを気持ち良くさせてあげたかったなのぅ」
「優しくって言ってるだろうがっ!!」
 小さな身体で饅頭だケーキだ花丸ハンバーグだと柔らかいものばかり、人形のくせにがっついて食べてるのに、雛苺の噛む力は強くて、
あきらかに論点はずれてはいたが、まずはそのことを糾弾しないとジュンのキレやすい腹の虫が収まらない。
「優しくぅ?」
「そうだよっ!! 人の言うことはちゃんと聞……!? はぁう!?」
 ジュンの注文通りに雛苺が噛んだのとは反対側、左耳が優しく甘噛みされる。
 こんどは痛くはないが、驚愕と自分の洩らしてしまった女の子のような恥ずかしい声に、ジュンは真っ赤な顔でそちらを見た。
 そして見られた方、翠星石の顔もジュンに負けないくらいに真っ赤である。
「な、なにしてんだよ……オマエ…………」
 そんなことはもちろん、ジュンは聞かなくともわかっているが、まさかドールズの中でも翠星石にされるとは思わなかった。
 どのドールなら妥当ということもないが、左耳を押さえたままで、まじまじと翠星石を見つめてしまう。
「お、おおおおお手本を チ、チ、チ、チ、チビチビ苺に見せてやったですよぅ べ、べ、べ、勉強しやがれですよぅチビチビ苺ぅ!!」
 ジュンの肩越しにまたしても“ほえっ?”とした顔をしている雛苺。
 翠星石は話題をはぐらかすように、矛先を雛苺に向けて一気に捲くし立てた。
 誰が見ても意識してジュンは無視されている。誰が考えてもその理由は(雛苺以外は)あきらかなので、あえて誰もツッコまない。


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