ジュン×真紅・翠星石・雛苺

 電気も付けない暗いリビングで、ジュンはソファーにゆったりと座りながらも、チラチラと部屋の入り口を見ながらリモコンを入れる。
 イヤホンを片耳だけすると、どんなに気をつけようが音はするのだが、ゆっくりとビデオテープをデッキにセットした。
 再生されるそこに映っていたのは中学生、に見えなくもない制服姿で微笑む一人の少女(?)である。
 少女(?)はベッドに座りながら、なにやら自己紹介しているようだが、よくよく見れば誰かに似ているような気がしないでもない。
 ジュンはもちろん、そう思ったからこそこのビデオを購入したのだが、やはり誰が見てもそう見えるようだ。
「あら?この娘、巴によく似ているのだわ」
「たしかに、あの竹刀女によく似てやがるですぅ」
「ジュンジュン!! トッモッエッ、の声が私聞きたいのぉ!!」
 当たり前のように会話している人形たちの声はそれぞれ、ジュンの右隣、左隣、そして頭の上である。
 ジュンは真っ赤な顔をしながら怒鳴るために大きく息を吸い込んで、
「!?」
“ピッ”
 あわててビデオを停止した。
「ジュン、なぜ消すのかしら……」
 ジ――――ッと問い詰めるように見つめてくる、ジュンの右隣に座る真紅の瞳はなぜか冷たい。
 わかってるんじゃないのかコイツ?
 などとも思うのだが、まさかジュンはそう聞くわけにもいかなかった。視線は激しくイタいが、とりあえず無視しようとすると、
“ピッ”
 ビデオはジュンの意志とは関係なく勝手に再生されて、巴に似た少女(?)はセーラー服のスカーフに手を掛けている。
 少し恥ずかしそうに微笑みながら、それでも躊躇することなくシュルッと小気味いい音を立てて抜き取った。
 ここまで見てからハッと我に返ったジュンは、
「あっ!? オ、オマエ!!」
 翠星石からリモコンをひったくる。ビデオが勝手に再生になったのならちょっとしたホラーだ。
 まぁ、三体の人形に囲まれて今更いうセリフでもないが。


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