ジュン×真紅・翠星石・雛苺
時計の針がそろそろ今日の終わりを告げ、明日の始まりを宣言しようかという時間だが、
“カッチ……カッチカッチ…………”
桜田家のヒキコモリ長男の部屋では、絶えることなくマウスをクリックする音が響いている。
ただデスクトップに映っている“一粒で十キロ痩せる薬”などという画面を見ながらも、意識は部屋の真ん中に我が物顔で鎮座する
三つのカバンに向いていた。
「……おい、性悪人形ども…………………………寝てるよなぁ……」
椅子を軋ませながらジュンがそちらを見ても、三つのカバンの一つとしてピクリとも動かない。
それでもジュンはしばらくは、ジ――――ッとカバンを見つめていた。
その時間が長いのか短いのかはわからないが、とりあえずはどのカバンも動く気配がない。
「よしっ ……オマエらのことを……ボクは信じるからな……」
言ってジュンは自分の部屋を、足音を立てないように“そ〜〜っ”と出ていった。ただ細心の注意を払ってはいても、
“カチャン……”
僅かに音がしてしまうのはどうしょもなかった。まるでそれが合図だったかのように、
“カチャン……”
三つのカバンが同時に開いた。
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