蒼星石

12月22日
俺は犬の散歩に出かけた。やはり外は酷く寒い。疲れがどっと来る。さっさと済ませたい。
俺の考えた意地悪とは、蒼星石が俺を捜している間に家を脱出して犬の散歩に出かけようという事だ。
蒼星石にとって犬の散歩は一日で一番の楽しみだ。だからこのことを知ったらかなり悔しがるだろう。
今までの意地悪に比べたらかなりソフトになっているが、気にならなかった。
それにしても犬は大分俺にも心を許してきた様子だ。しかしやはり完璧とは言えない。
しばらく歩いていると、道の向こうに柏葉さんがいた。とはいっても毎日見かけることだ。
しかし今日はいつもと違い、なぜか真紅と雛苺がいない。独りぼっちで、どこか暗い雰囲気だった。
その雰囲気で、俺はどうも声をかける気にはなれなかった。
柏葉さんはどうしたんだろう?俺は考え事をすると早足になる癖がある。それに今日はとろい奴がいない。
今日はいつもより早く家に着いたようだ。寒さと疲れで、さっさと休みたいと思った。
家に入ると、蒼星石が見あたらない。それに、ところどころが散らかっている。俺は居間に向かった。
こたつに入るとそのまま寝っ転がった。二階の方からガサゴソと物音がする。
階段を下りる音がした。そして蒼星石が居間に入ってきた。
「あ!マスター見つけた!」
蒼星石は嬉しそうに俺を指さして言った。
俺はひどくあきれてしまった。この馬鹿は自分が騙されたことに全然気づいていないらしい。
「あ、マスター、そろそろ翠星石(犬の名前)の散歩の時間じゃないの?ねえ、行こうよ!」
蒼星石は俺の腕を掴んで引っ張った。目が輝いている。俺はあきれて言葉も出なかった。
外は酷く寒い。それに疲れている。しかし結局俺は、何故だろうか、二度目の散歩に出かけることにした。


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