蒼星石
12月11日
「ねえ、マスター、この犬の名前はなんていうの?」
やけに楽しそうだ。異様にむかつく。
「名前はまだ付けていない。」
この犬は保健所で処分されそうだったのをなんとなく連れて帰った奴だ。
全然人になつかなず凶暴だ。だから名前を付ける気もなかった。
しかし一応散歩には連れて行っている。危険なので人通りの少ないコースを選んでいる。
「じゃあこのわんちゃんは翠星石って名前でいい?」
馬鹿みたいにはしゃいでいる。しかも自分の姉の名前を犬に付けるなんてとんでもない馬鹿だ。
「翠星石・・・。」
にやにやした顔で犬に手を出した。そのとき、
「痛い!放して!やめてよ翠星石!」
やはり犬は蒼星石の腕にかみついた。俺はつい吹き出しそうになった。
「やめて翠星石!助けて、マスター!」
飼い犬に手をかまれるとはまさにこのことか。
蒼星石は痛そうな、絶望に満ちた、悲しそうな顔をした。
このままでも良かったのだが散歩に行かなければならないので犬を押さえつけて
なんとか蒼星石を助けてやった。
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