じじい(柴崎元治)×蒼星石

 事の発端は、洗濯する為に上着を脱いだ事。
 スリップとズロース姿に元治は「やっぱり女の子なんだねえ」と言った。
 洋服が乾くまでの間は、店でお茶を喫しながらの取り留めのない話。
 何気無く口にした「好きです」の一言。
 純粋な好意としての言葉。
 たったそれだけの事が、全てを変えた……。

 ……血塗れになった床の上に佇む蒼星石。
 老婆は――柴崎マツは――元治の首を締めた後、蒼星石に襲い掛かった。
 痛みの残る体で逃げ回り、必死の思いで庭師の鋏を掴んだ。
 そこからは良く憶えていない。
 気付いた時には、二人とも事切れていた。
 蒼星石は何も言わず、元治を見詰める。

 ごめんね、ごめんねマスター。
 ごめんね……ごめんね……ごめんなさい……。


「ごめんなさい、マスター……」


 蒼星石は庭師の鋏を喉元に押し付け、
 力を、込めた。


(終)


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