ジュン×金糸雀
某月某日、昼。
いつもと変わらぬ平日、引き篭もり少年がパソコンに向かう午後。
今日は珍しく静かで、ジュンは通販サイト巡りを満喫していた。
人形達は下のリビングで各々――真紅はくんくんのビデオ、翠星石と雛苺は昼寝――寛いでいる。
一見平和そのもの。
しかし、予期せぬ訪問者が桜田家に旋風を巻き起こす――。
桜田家、ベランダ。
洗濯物の陰に隠れて、縁に取り付く者の姿がある。
黄色いドレス、南瓜形のパンツ、特徴的な広いおでこ……第六ドールの金糸雀だ。
ピチカートを連れて、今日こそ桜田家に侵入してやろうと息巻いている。
「……失敗に失敗を重ねて幾数回、今度こそは絶対に成功よ、ピチカート」
ベランダの縁を恐々歩き、物干し竿に掴まってするすると下まで降りる。
匍匐全身で窓の傍まで行ってから、壁に張り付いて待機。
「洗濯物を干したのが今朝七時半過ぎ、そろそろ取り込まれる筈」
辺りに注意しながら、侵入の時を待つ。
すると、まるで申し合わせたかのようにサッシが開いた。
「チャ――――ンス! 狙った通りよ!」
と、僅かに開いたサッシの隙間から部屋に飛び込む。
「策士金糸雀、華麗に侵入成功かしら!」
セーフ! かと思いきや、次の瞬間サッシは閉まっていた。
そして、部屋の中ほどまで一気に飛び込んだ金糸雀の後ろに佇む少年が一人。
「……で、お前は誰なんだよ」
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