ジュン×水銀燈

 気付かれた……。
 全身から、血の気が引いてゆく……。
 身体が小刻みに震え出したのは、風呂場に裸でいるからというだけじゃないだろう。

「……さーて、風呂入るか」
「待ちなさい人間」

 翼で首を絞められた。

「どう言う事か、説明してもらおうかしらぁ」
 凄みのある声で呟き、ギリギリと締め付けを強くする。
「……服が埃で汚れていたから洗った」
「わけないわよねぇ……」
 翼が持ち上がり、危うく吊るされそうになる。
 僕は一般人がこの光景を見た感想を述べたまでです。
「本当……本当だ」
「嘘ばっかり……ジャンクにされたいのかしらぁ?」
「ぐ……ほ、本当に僕は洗濯を……ぐあっ!」
 首を絞められたまま、物凄い力で頭を壁に叩きつけられた。
「嘘じゃ無い、命を賭けたって良い」
「へえ、言うじゃなぁい……」
「金糸雀の命を……」
「それ赤の他人じゃないの」

 そろそろ食い下がるのも無駄かと思ったその時、何故か水銀燈は僕を解放した。

「あくまでシラを切る気ねぇ……」

 その顔は不平満々だが、いつもの狂気じみた表情とは少し違った。


「だったら……折角だもの、お湯にでも浸からせてもらうわ」


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