ジュン×蒼星石 その2
『蒼の誓い』 4
身なりを整えた蒼星石はいつものボーイッシュなスタイルだった。
「なんだ、今日ぐらいあれを着てほしかったけどなあ……」
残念そうにジュンが言うと、蒼星石は真剣な表情でジュンの左手をつかんだ。
「この格好じゃないとダメなんだ」
「そ、蒼星石……?」
蒼星石は緊張した表情でズボンのポケットからそれを取り出した。
「それは薔薇の指輪!?」
ジュンは驚いた。ローゼンメイデンがマスターとして選んだ者と契約をかわす指輪。ドールとマスターを繋ぐ力の媒体。
「確かあの爺さんと契約していたんじゃ……」
「魂の契約は高齢者には負担が大きくて。最近体調が悪くなりがちだったから契約を破棄したんだ」
「そうだったのか……」
確かにドールが力を使うと強い脱力感を覚える。いくら不健康な引きこもりの身とはいえ、さすがに老人よりは体力がある。
自分でもあれだけ疲れるんだから、ましてや老人には。
「でも、何で僕を……」
「ジュンじゃないと嫌だ」
あまりにストレートすぎる答えに、思わずジュンは顔を赤くした。
「ば、バカ、恥ずかしいことを言うなよ」
「ジュン、いつもと立場が逆だね」
「ば、バカ……」
しばらく二人は無言で見つめあった。
「ジュン、この薔薇の指輪に誓って……」
ジュンは一度目を閉じて考え込んだ。だがそれも一瞬。開いた目には決意が宿っていた。
「分かった。その薔薇の指輪に誓う……」
ジュンは目を閉じると、蒼星石が差し出す薔薇の指輪にそっと口付けした。
パァァァァァ……!!
一瞬眩い光が部屋を満たした。
「左指が熱い……」
ジュンは左の薬指を見ると、これまで真紅・雛苺・翠星石と誓いをするごとに大きくなっていく指輪が、また少し大きく華美に
なっているのに気づいた。
「ジュン……ありがとう。ジュンの心を感じるよ……」
蒼星石は幸せそうに自分の身体を抱き締める。そんな蒼星石を見て口元を緩めるジュンだったが、すぐ難しい顔になった。
「さて、蒼星石とも契約したことをどうやって真紅たちに説明しよう……」
それはかなりの難行であることは容易に想像できる。蒼星石に気づかれないようにため息をつきジュンであった。
おしまい
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