ジュン×蒼星石 その2

『蒼の誓い』

ジュンは暗い物置で、ドールズに気づかれないよう黙々と作業をしていた。もしも誰かが見ていたら感嘆していただろう。
ただの青い布が、鮮やかな手つきと共に美しい衣装へと変じていくのだから。
「よし、こんなものかな……」
ものの数時間でそれは完成した。清楚な趣の青く美しいドレスだ。

「ジュン、僕に用事って?」
ジュンは、普段あまり使わない客間に蒼星石を呼んだ。ここは他のドールズが興味がひくようなものはないので、1体の
ドールとこっそり会うのに便利だ。
「これ、着てみてくれないかな」
「これは……?」
蒼星石はジュンが差し出したものを見て目を丸くした。自分の名前と同じ色のドレス。ジュンの意図は明らかだ。
「ジュン、僕、そんなに女の子っぽくないかな……」
蒼星石は悲しそうに目を伏せる。最近自分のボーイッシュな外見が妙に気になり始めたのだ。
「いや、そういうわけじゃないんだ!」
ジュンは慌てて否定する。
「感じているときの蒼星石はとても女の子っぽい……っ痛っ!!??」
「いきなり恥ずかしいこと言わないでよ!!」
顔を真っ赤にしてジュンを蹴飛ばす蒼星石。その膨れた顔は、いつもの無表情からは想像できないほど女の子らしかった。
「だから、いつもの蒼星石も好きだけど、僕はもっと色々な蒼星石を見てみたいんだ」
「……もう、口ばかりうまいんだから……」
口を尖らせて不平を言いつつ、頬が緩むのを抑えきれない蒼星石であった。
「せっかくジュンが作ってくれたんだし、着てみるよ」
「やった!」
「さて……」
「…………」
「えーと……」
「……早く着替えてよ」
ドゴッ!
「あっち向いててね」
「……なんか、思ったより手が早いんだな、蒼星石……。それに、今更恥ずかしがる仲じゃ……」
ドグォッ!!
「はい……後ろ向いていますです」


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