ジュン×翠星石
翠星石は振り続ける雨の中、びしょ濡れになりながらも、薔薇の花壇の前で立ち続けていた。
手には雨水で溢れかえっている如雨露。それをしっかりと握り締め、ぐらつきそうな心を支えていた。
こんなとき、蒼星石がいれば何と言ってくれただろう。
私の想いの浅はかさに、呆れかえるだろうか。
私に哀れみを感じ、同情してくれるだろうか。
どちらにしても、自分の心の支えとなっていた彼女は、今ここにはいない。
そして、彼。ジュンの心の支えになっていた彼女もいない。
きっと、お互い心の隙間を埋めるため、傷を舐めあっているのだろう。
ジュンは自分に真紅の姿を重ね、私は蒼星石を失った悲しみとジュンへの愛ゆえに、彼との情事を重ねる。
空回りの想い。
きっとその想いが触れ合うことはない。
自分自身の愚かさと惨めさに嫌気がさしながらも、ただ一人の双子の片割れにたどたどしく語りかける。
「馬鹿ですね。 私は……」
雨は降りつづけている。
彼女の前髪から流れ落ちる雨の水滴。
それに紛れて、温かい何かが彼女の目から零れ落ちた。
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