水銀燈・ジュン×真紅

もうすぐ日付が変わるであろう深夜。
トランクの中で深い眠りについていた私の耳に、ガタゴトと人の気配のする音が聞こえてくる。

「……んぅ……誰……ジュン?こんな夜中に何やってるのかしら……もう……」

せっかくの眠りを妨げられすこし不機嫌になりながらも、私は内側から徐々にトランクの蓋を開けた。
漏れてくる光で深夜だというのに部屋に電気が点いているのを疑問に思いながら、そのままトランクの蓋を完全に開けると……そこには、私がまるで予期していない人物の顔が有った。

「あらぁ、まだ眠ってていいのに……もうお目覚めぇ?……真紅……」

甘く艶のある声が、寝起き直後の頭の中に響く。
聞くだけでイライラしてくる、その人を馬鹿にしたような喋り方をする子は、私の知り合いには彼女しかいなかった。

「!?……す、水銀燈!」
「ダメよぉ真紅、寝不足はお肌に悪いんだからぁ……そのブサイクな顔、ますます悪くなっちゃうじゃなぁい……クスクス♪」

ニッコリとした笑顔を浮かべながらそう言いはなつ彼女を見て、私はとっさにトランクから飛び出し身構えようとする。
だが次の瞬間、彼女の背中の黒い翼が素早く動き、そのまま私の両腕をおもいきり掴みあげる。
常人の力とは比べ物にならないほどの強い力で、ギリギリと手首を締められ、そのまま私の体は床に押し倒されてしまう。

「く!……は、離しなさい!」
「いやぁよぉ……これから私が……ううん……私達がたぁっぷりイジメてあげるんだから……♪」


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